海外展開している日本法人や日本に進出している外資系企業においては、グループ間の役務提供について、対価をいくらにするかという悩ましい問題があります。今回は、それらの対価を決める上での1つの方法であるコストプラス方式についてご紹介します。
Index
1.コストプラス方式とは
コストプラス(マークアップとも言われたりしますが、今回はコストプラスとします。)方式とは、役務提供を行うにあたって、当該役務提供を行うためにかかった費用に一定の利益率を加算した金額を取引対価とする価格の決定方法です。
価格の決定方法については、様々な決め方や考え方があるため、適切な価格がいくらになるかというのは非常に判断が難しいところではありますが、税務上は移転価格事務運営要領3-11にて一つの指針が示されており、一定のグループ間での役務提供については、当該役務提供のために係ったコストに5%の利益を乗せた金額と対価としている場合、妥当な取引価格として認められるものとされています。
2.どういったケースで使われる?
実際にどういったケースでコストプラス方式が使われているかというと、海外の企業が日本の消費者に商品を販売している場合、その商品の保守や修理、日本語で対応できるコールセンター、その他海外製品の営業サポートなど様々なサポートが必要となってきます。
上記のようなサポートをすべて海外から直接行うというのは難しいため、日本に法人を設立し、日本法人がこれらのサポートを行うといったケースがあります。
その場合の売上の計算方法として使用される一つの方法がコストプラス方式です。
上記は、海外の法人が日本へ進出する場合についてですが、日本の法人が海外へ進出した場合も同様に考えられます。
3.コストプラス方式を使うことによるメリット
コストプラス方式を使うことによる一番のメリットは何といっても計算が簡単ということです。
コストプラス方式に関する契約書に記載された対象となる経費の金額を集計し、5%の利益を上乗せした金額が売上として計上されることになるため、請求金額の計算方法や記帳処理も非常にシンプルなものとなります。
また、海外法人との間で行われるコストプラス方式により受け取る役務提供対価は、消費税法上免税売上として取り扱われるため、国内で支払った消費税の大部分が還付されるというメリットも考えられます。
4.コストプラス方式を使うことによるデメリット
コストプラス方式にはもちろんデメリットがあります。それは、事業活動や役務提供の内容が限定されるという点です。
実際に移転価格事務運営要領3‐11では以下のように記載されています。
3-11 企業グループ内における役務提供に係る独立企業間価格の検討
(1) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供が次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その対価の額を独立企業間価格として取り扱う。
イ 当該役務提供が支援的な性質のものであり、当該法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと。
ロ 当該役務提供において、当該法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと。
ハ 当該役務提供において、当該役務提供を行う当該法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受け若しくは管理又は創出を行っていないこと。
ニ 当該役務提供の内容が次に掲げる業務のいずれにも該当しないこと。
(イ) 研究開発
(ロ) 製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング
(ハ) 金融、保険又は再保険
(ニ) 天然資源の採掘、探査又は加工
ホ 当該役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと。
ご覧いただくとお分かりの通り、要件が複雑になっており、上記の要件に該当しない場合には、適正な取引価格と認められない可能性があるため、税務調査でも否認を受ける可能性があります。従って、上記要件を満たさない場合には、コストプラス方式が機能しないことになりますので留意が必要です(すでにコストプラス方式を採用していた法人が上記の要件に該当しなくなった場合も同様に注意が必要です。)。
また、上記制限以外にも、契約内容をきちんと整理しておく必要もありますので、リーガルチェックやタックス面からみても問題ないかなどを確認するために、ある程度の費用が必要となってきます。
5.おわりに
上記でもご説明した通り、コストプラス方式はどのような状況でも適用できるわけではなく、その法人が果たしている機能や負っているリスクなど総合的に見て妥当かどうかを検討する必要があります。
これから法人設立を検討していらっしゃる方やコストプラス方式をすでに導入していらっしゃる方でお困りの方はぜひお気軽に下記お問い合わせフォームからご連絡ください。
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