任意組合と匿名組合の違い及び税務上の取り扱いについて~応用編~

ファンドマネージャー 法人税

前回、任意組合と匿名組合の違いについて概要を紹介させていただきましたが、今回はより踏み込んだ税務の取り扱いについてご紹介したいと思います。

 

1. 任意組合

(1) 法人が組合員の場合

① 所得の認識時期

基礎編でもご説明しましたが、任意組合が事業を営むことにより発生した利益及び損失は組合契約に定める分配割合又は各組合員の出資割合に応じて分配されることになります。この分配損益については、現実に利益の分配又は損失の負担をしていない場合であったとしても、組合員である法人のその事業年度における益金又は損金として取り扱う必要があります。

 

ただし、当該組合事業に係る損益を毎年1回以上一定の時期において組合損益を計算し、かつ、当該法人への損益の帰属が損益発生後1年以内である場合には、帰属損益額はその組合事業の計算期間を基として計算し、計算期間終了の日の属するその法人組合員の事業年度の益金又は損金として算入するものとされています(法基通14-1-1の2)。

 

上記通達により、組合事業の計算期間が異なる任意組合等を複数介在させ、当初の損益取引を行った任意組合等で発生した個々の損益が1年を超えて法人に帰属し、損益に対する課税が繰り延べられるというような処理はできなくなっています。

 

② 消費税の取り扱い

任意組合に属する資産の譲渡及び課税仕入れ等については、任意組合の構成員が組合契約に定める分配割合又は出資割合に応じて、それぞれ資産の譲渡及び課税仕入れ等を行ったものと考えられるため、それぞれの分配割合又は出資割合に応じて消費税についても認識する必要があります(消基通1-3-1)。

 

③ 分配を受ける利益等の額の計算

法人組合員が受ける、任意組合からの損益分配の方法としては3つあり、原則としては総額方式が用いられることになっています。

しかし、多額の減価償却費の前倒し計上など課税上弊害がない限り、継続適用を要件として、中間方式及び純額方式についても認められています。

それぞれ方法については、下記の通りです。

名称 計算方法 税法上の制限等
総額方式 当該組合事業の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法 NA
中間方式 当該組合事業の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法 この方法による場合には、各組合員は、当該組合事業の取引等について受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
純額方式 当該組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法 この方法による場合には、各組合員は、当該組合事業の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。

 

 

④ 組合損失の損金算入制限

上記①では、組合員に帰属する利益又は損失はその組合員の益金又は損金に算入することをご説明しましたが、損金算入について一定の制限が課せられる場合があります。

それは、任意組合の組合員が特定組合員と呼ばれる、組合事業に関する業務執行等に関与しておらず、実質的に組合事業に関する責任の限度が組合財産に限定されているような組合員については、組合事業に出資した金額を超えて損金算入が認められないことになっています(措法67の12)。

 

こちらの金額は単年度ごとに判定するものではなく、損失額の累計が出資金額を超えるかどうかで判断する必要があります。きちんと別表を作成していれば正しく計算できるかと思いますので、別表添付を忘れないよう留意が必要です。

 

2. 匿名組合

(1) 営業者の場合

① 法人税の取り扱い

匿名組合に関する事業は営業者が行うことになります。

従って、匿名組合事業で発生した収益及び費用は営業者において純損益を計算することになります。

また、当該計算により発生した利益の額又は損失の額を匿名組合契約により分配した場合には、当該分配した利益の額は営業者においては損金として取り扱われ、分配した損失の額については、営業者においては益金として取り扱われることになります。

 

② 消費税の取り扱い

匿名組合の事業に関する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、営業者が単独で行ったものとして取り扱われるため、営業者において認識する必要があります(消基通1-3-2)。

 

 

(2) 法人組合員の場合

① 損益の分配

法人が匿名組合員である場合には、その匿名組合営業において生じた利益の額又は損失の額は、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約により分配を受け又は負担すべき部分の金額をその匿名組合契約における計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することになります(法基通14-1-3)。

この場合、法人である組合員においては、上記(1)③にあるような3つの方法を選択できるものではなく、営業者からの損益分配を受け入れるのみであるため、純額方式しかとり得ないものと考えられます。

 

② 利益の分配

匿名組合契約に基づく利益の分配については、所得税法210条に基づいて、20%の源泉所得税が課せられます。

これらの源泉所得税については、所得税額控除の対象となることから、確定申告時に法人税額から控除することが可能です。

 

③ 組合損失の損金算入制限

任意組合と同様、匿名組合契約においても租税特別措置法67条の12に規定されている特定組合員に該当する場合には、匿名組合契約による出資金額を超えた損失を、法人税法上損金として処理することができなくなっています。

 

3. おわりに

任意組合・匿名組合については特殊な論点が多く、どの税理士でも対応できるというものではありません。

弊所では個別相談も承っておりますので、ご不安な場合は下記お問い合わせフォームからぜひお気軽にご連絡ください。

 

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