【租税条約の考え方】使用地主義と債務者主義について

国際税務

こんにちは、税理士の竹田です。

海外の法人や個人と取引がある会社については、租税条約適用の検討をされたことがある方もいらっしゃるかと思います。

その租税条約の適用の際に、国内法とは異なる取り扱いがあることにより判断に迷われるという事例もあるかと思いますが、今回はその判断に迷う要因の1つである使用地主義と債務者主義についてご説明いたします。

 

1.使用地主義とは

① 概要

使用地主義とは、その資産や権利などが使用された場所を所得の源泉地とするものです。

 

例えば、海外の法人が所有している特許権を、日本の法人が日本での製品の製造販売のために使用している場合、特許権が使用された場所は日本であるため、日本が源泉地ということになります。

 

ちなみに、日本の税法ではこの使用地主義を採用しています。

 

② 条文規定

所得税法の条文ではどのように規定されているのかを見ていくと、海外の法人又は個人に支払う対価については、所得税法第161条に記載されている国内源泉所得に該当するかどうかを確認する必要があります。

 

所得税法第161条の規定では、「国内にある」や「国内において」といったような書き出しから始まるものがほとんどですが、国内にある資産や権利等の使用などに限って規定していることからも、日本は使用地主義を採用していることがお分かりになるかと思います。

 

 

2.債務者主義とは

① 概要

債務者主義とは、使用地主義と異なり、その使用料等の対象となる権利等がどこで使用されたかにかかわらず、その使用料等を支払う者の居住地により所得の源泉地を判定するものです。

 

簡単な具体例について記載しますと、海外の法人が所有している工業所有権等を日本の法人が海外でのプロジェクトのため海外で使用し、その使用料を日本の法人が支払う場合、使用料の支払いをする法人の居住地が日本であるため、日本が源泉地ということになります。

 

② 条文規定

日本の所得税法では上記1に記載した通り、使用地主義が採用されているのですが、租税条約が締結されている国との取引では、所得税法第162条において租税条約で異なる定めがある場合には租税条約を適用する旨が記載されています。

 

また、租税条約では多くの国がこの債務者主義を採用しているため、必ず租税条約の内容を確認する必要があります。

 

例えば、インドに支払う使用料で見ていくと、日印租税条約第12条第6項に、

 

「使用料及び技術上の役務に対する料金は、その支払者が一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。…」

 

と規定されています。

 

上記を見ていただくとお分かりの通り、使用地主義のようにどこで使用されたかという規定はなく、支払者がどこにいるかという視点で規定されており、このことからも日印租税条約では使用料の規定において債務者主義が採用されていることがわかるかと思います。

 

 

3.おわりに

上記に記載した通り、実際に日本と租税条約を締結している国の多くが、債務者主義を採用していますので、日本の国内法とずれが生じており、源泉所得税の対象となるのかどうかや租税条約の適用にあたっての判断が難しい場合があります。

また、法人に支払うのか個人に支払うのかによっても取り扱いが異なるので留意が必要です。

実際の適用にあたってはプロに確認することをお勧めいたします。弊社でもスポットで確認させていただくことが可能ですので、お困りの際はお気軽に下記お問い合わせフォームからご連絡いただければと思います。

 

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竹田

 

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