【3月決算法人必見】賃上げ・投資促進税制の令和3年度税制改正について

法人税

こんにちは、税理士の竹田です。

所得税の確定申告や12月決算法人の確定申告対応など業務に追われてはいますが、今回は3月決算法人の決算前に、それぞれ大企業向け・中小企業向けに賃上げ・投資促進税制についてどのような改正があったかを中心にご説明させていただきたいと思います。

こちらをお読みいただくことで、税額控除の適用があるのかどうかや、決算前にどのような資料を収集すればよいかなどがおわかりいただけるかと思います。

 

1.概要

令和3年度の税制改正において、賃上げ・投資促進税制について適用要件の見直しが行われています。令和3年度の税制改正が適用されるのは、令和3年4月1日以後開始する各事業年度とされていますので、多くの3月決算法人はこれらの適用対象になるかと思います。

ひとまとまりに、賃上げ・投資促進税制と書いておりますが、これまでと同様に、いわゆる大企業と中小企業で名称や適用要件が異なっていますので、これらについて、下記で詳しくご説明いたします。

 

2.人材確保等促進税制(大企業向け)の適用要件及び改正点

資本金の額が1億円を超えるなど、一定の要件を満たす法人が人材確保等促進税制の対象法人となります。

令和3年度の税制改正では、これまで継続雇用者給与等が前期の継続雇用者給与等よりも3%以上増加という要件が、新規雇用者給与等支給額*1と前期新規雇用者給与等支給額を比較して2%以上増加という要件に変更されました。

*1新規雇用者給与等支給額とは、国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいいます。ただし、給与等に充てるため他の者 から支払を受ける金額(ただし、雇用安定助成金額を除く。)がある場合には、当該金額を控除します。

 

また、これまであった国内設備投資の要件については削除されております。

さらに、教育訓練費の上乗せ規定ですが、これまで当期の教育訓練費と前期及び前々期の教育訓練費の平均を比較して20%増加した場合に適用されていましたが、改正により、当期の教育訓練費と前期の教育訓練費を比較して20%増加していればよいという要件に変更されました。

 
現行 改正後
適用要件 雇用者給与等支給額>前期雇用者給与等支給額 変更なし
継続雇用者給与等支給額≧前期における継続雇用者給与等支給額×103% 新規雇用者給与等支給額≧前期における新規雇用者給与等支給額×102%
国内設備投資額≧減価償却費×95% 削除
税額控除 雇用者給与等支給額の増加額×15% 控除対象新規雇用者給与等支給額*×15%
*ただし、雇用者給与等支給額の増加額が上限
教育訓練費≧前期及び前々期の教育訓練費の平均額×120%を満たす場合
⇒雇用者給与等支給額の増加額×20%
教育訓練費≧前期の教育訓練費の額×120%
控除対象新規雇用者給与等支給額×20%
法人税額の20%が限度 変更なし

 

3.所得拡大促進税制(中小企業向け)の適用要件及び改正点

資本金の額が1億円以下の法人など、一定の要件を満たす中小企業者等が所得拡大促進税制の対象法人となります。

令和3年度の税制改正では、適用要件が前期の雇用者給与等支給額よりも1.5%以上増加していることという条件に1本化され、非常に判定が容易になりました。

また、上乗せ規定の部分についても同様に、継続雇用者給与等支給額で判定するのではなく、雇用者給与等支給額が2.5%以上増加するかどうかで判定することとなっております。

現行 改正後
適用要件 雇用者給与等支給額>前期雇用者給与等支給額 雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額×101.5%
継続雇用者給与等支給額≧前期における継続雇用者給与等支給額×101.5%
税額控除 雇用者給与等支給額の増加額×15% 控除対象雇用者給与等支給増加額×15%
イ. 継続雇用者給与等支給額≧前期継続雇用者給与等支給額×102.5%
ロ. 教育訓練費≧前期の教育訓練費の平均額×110%を満たす場合
or
経営力向上計画に基づき、経理力向上が確定時に行われたことが証明されていること⇒雇用者給与等支給額の増加額×25%
イ. 雇用者給与等支給額≧前期雇用者給与等支給額×102.5%
ロ. 教育訓練費≧前期の教育訓練費の平均額×110%を満たす場合
or
経営力向上計画に基づき、経理力向上が確定時に行われたことが証明されていること⇒控除対象雇用者給与等支給増加額×25%
法人税額の20%が限度 変更なし

4.おわりに

人材確保等促進税制・所得拡大促進税制ともにどういった金額を集計すれば良いかや細かい金額の調整など処理が煩雑になっているかと思います。また、これらの規定については、確定申告書への書類添付要件などもありますので、処理が不安という方々についてはぜひお問い合わせください。

 

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竹田

 

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