減資による法人税・地方税への影響について

法人税

こんにちは、税理士の竹田です。

最近ある航空会社がコロナの影響による財政体質を改善するため減資を行うといった記事が出ていましたが、今回は資本金の額が1億円を超えている会社が資本金を1億円以下に減資をすると法人税・地方税にどのような影響があるのかについて主な論点をまとめてみました。

 

1.留保金課税

期末資本金の額が1億円を超える法人で、同族関係者の1人並びにこれらの方と特殊な関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式等の50%超を保有しているような場合には、いわゆる「特定同族会社の留保金課税」が適用されることとなります。

減資により期末資本金の額が1億円以下になる場合には、これらの制度の適用はなくなるため、税額負担は減少するのですが、資本金の額が5億円以上の大法人に100%支配されている法人など一定の法人については、減資したとしても継続して適用されることになりますので留意が必要です。

 

2.繰越欠損金の使用制限

期末資本金の額が1億円を超える法人については、繰越欠損金の使用について制限が課せられることとなります。

具体的には、その事業年度に発生した所得金額の50%までしか繰越欠損金を使用することができないのですが、減資により資本金の額が1億円以下になる場合には、その事業年度に発生した所得金額まで繰越欠損金を使用することができます。

ただし、上記1の留保金課税と同様に、資本金の額が5億円以上の大法人に100%支配されている法人など一定の法人については、減資したとしても50%の制限が課せられることになりますので留意が必要です。

 

3.中小企業の優遇税制

上記のほか資本金1億円以下に減資した場合には、以下のような中小企業の優遇税制が適用できることとなります。ただし、上記1,2のように一定の要件に該当した場合には、減資したとしても大法人と同様の取り扱いになるものもありますので、適用にあたってはそれぞれ詳細な確認が必要となります。

① 年800万円以下の部分について軽減税率の適用

② 取得価額30万円未満の減価償却資産について、300万円まで一時の損金算入として処理が可能

③ 年800万円まで交際費の損金算入が可能

④ その他試験研究費の税額控除や所得拡大促進税制などの中小企業向けの税額控除について適用が可能

所得拡大促進税制の要件については下記URLをご参照ください。

竹田&アソシエイツ税理士事務所 – 【3月決算法人必見】賃上げ・投資促進税制の令和3年度税制改正について (takeda-associates.com)

 

4.外形標準課税

期末資本金の額が1億円を超える法人については、事業税について外形標準課税が適用されることになります。

期末資本金の額が1億円以下の法人に対しては、所得割と呼ばれる所得の金額に応じて課される税金のみが適用されるのですが、期末資本金の額が1億円超える法人については、所得割のほか、外形標準課税と呼ばれる支払った給与等、支払利子や支払賃借料などを加味して計算される付加価値割と税務上の資本金等の金額に応じて課される資本割と呼ばれる税金も課されることとなります。

従って、外形標準課税が適用される法人については、所得とは関係ない項目を考慮して税額計算が行われるため、赤字(欠損)であったとしても一定の税負担が生じる可能性があります。

仮に減資を行うことにより、会計上の期末資本金の金額が1億円以下になると、外形標準課税の適用対象とはならないのですが、外形標準課税が適用される法人については、外形標準課税適用外の法人と比較して所得割の税率が低いため、外形標準課税を適用していた方が、税額が減るケースもあるので留意が必要です。

 

5.均等割額

法人住民税の均等割の額については、期末における税務上の資本金等の額や従業者数に応じて税額が変わることになります。税務上の資本金等の額と会計上の資本金の額とでは、定義が異なっているため、会計上の資本金の額を減額したからといっても、必ずしも税務上の資本金等の額が減少することにはなりません。

しかし、会計上の資本金又は資本準備金を取り崩し、その他資本剰余金を増加させ、その後1年以内に、その他資本剰余金から欠損填補に充てた金額については、均等割の計算上、資本金等の額から控除することができるようになっているため、これにより均等割りの金額が減少することがあります。

欠損填補を行うに当たっては法的な手続きも必要となることから早めの検討が必要となります。

 

6.おわりに

減資に関しては、税務以外の法律や利害関係者への影響もあることから慎重な判断が必要となります。また、過度な節税と捉えられた場合には思わぬ税務リスクが発生することも考えられるため、十分な検討が必要です。

より詳細なご相談が必要という方につきましては、お気軽に下記お問い合わせフォームからご連絡ください。

 

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竹田

 

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