こんにちは、税理士の竹田です。
本日はグループ通算制度についての続きとなります。
今回はどのような企業グループがグループ通算制度開始の検討をする余地があるかという視点から、グループ通算制度導入によるメリット3選と題してご説明します。
その前に、グループ通算制度は親法人とその親法人と100%支配関係がある子法人が日本国内に1社以上あるような企業グループに適用される制度であるため、これに該当しない法人については適用できません。ですので、その前提で読み進めていただければと思います。
Index
1.メリットのある法人とは
では実際に、どのような企業グループがグループ通算制度開始の検討をする余地があるかというと以下に該当するような企業グループです。
① 通算グループ内に所得が発生している法人と欠損(赤字)が発生している法人が混在している。
→損益通算のメリットが取れるため
② 外国税額控除や試験研究費の税額控除を適用している。
→税額控除の限度額が増えることにより、税負担額が減少する可能性がある
③ 会社分割等を検討している法人
→会社分割により、分割法人と分割承継法人で所得の法人と欠損の法人が生じた場合においても、損益通算により相殺される
2.具体的なメリットの内容
少し専門用語が多かったので、以下で具体的に内容を説明いたします。
①の損益通算のメリットについて
損益通算のメリットが取れるという点についてですが、損益通算とは同じ事業年度内に所得が発生している法人と欠損が発生している法人がある場合には、欠損法人の欠損金を所得が発生している法人の所得金額の比で按分し、それらを配分することを言います。具体的な計算については以下をご参照ください。
P社(親法人) | S1社 | S2社 | 合計 | |
所得金額 | 300 | 100 | 400 | |
欠損金額 | ▲200 | ▲200 | ||
損益通算 | ▲150 | ▲50 | 200 | 0 |
損益通算後 | 150 | 50 | 0 | 200 |
P社
▲200(欠損金合計)×300(P社所得)/ 400(所得合計)=▲150
S1社
▲200(欠損金合計)×100(S1社所得)/ 400(所得合計)=▲50
上記のように、単体での納税であれば、S2社で発生する欠損金額は来年以降に持ち越され、所得が発生した事業年度において欠損金が使用されることにより、税額を減少させる効果がありますが、グループ通算制度を適用すれば、損益通算により、早い段階で欠損金を使用することができ、グループ全体での税額負担を減少させる効果が得られます。
②の税額控除のメリットについて
グループ通算制度では単体法人の申告と異なり、グループ全体で計算をする項目がいくつかあります。その1つとして税額控除関係の項目があるのですが、だいたいどの税額控除にも法人税額の○○%までなど、税額控除の限度額が設定されています。
もし、単体申告時に税額控除額が限度額を超えていたため控除できなかった金額が生じていたとしても、グループ通算制度を適用することで、グループ全体での税額をもとに限度額の計算を行うと、税額控除限度額の枠が広がることにより、税額控除額が増加するというメリットが発生する可能性があります。
③の会社分割等のメリットについて
グループ内で会社分割等を行った場合、分割法人のある事業を他の法人に分割することにより、分割元もしくは分割先の法人が欠損ポジションになることがありますが、上記①で説明したように、所得が発生している法人と欠損金が発生している法人については損益通算によるメリットが得られるため、会社分割等による組織再編の手法がとりやすくなるというメリットがあります。
一度グループ通算制度を適用すると、原則としてやめることはできないため、実際に適用するにあたっては、十分に検討する必要がありますが、上記に該当するような法人については、検討の余地があるため、導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
もちろん、我々の事務所でサポートさせていただくことは可能ですので、お気軽にご連絡ください。
竹田
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