こんにちは、税理士の竹田です。
今回は決算直前という法人も多いかと思いますので、試験研究費の税額控除のうち、令和3年度の税制改正を中心にご説明したいと思います。
Index
1.試験研究費の税額控除とは
試験研究費の税額控除とは、新技術や新商品の開発を行う企業が、それらの開発を行うために支出した試験研究に関する費用のうち、一定額を法人税の額から控除する制度です。
試験研究費の税額控除には大きく3つのタイプがあります。
①一般型:大企業向けの税額控除制度
②中小企業技術基盤強化税制:中小企業向けの税額控除制度(適用除外事業者を除く。)
③オープンイノベーション型:国の試験研究機関や大学等と共同で行う試験研究やこれらの者に委託する試験研究又は中小企業者に支払う知的財産権の使用などがある場合に適用される税額控除制度
2.改正後の税額控除率
令和3年度税制改正後(令和3年4月1日以後に開始する事業年度において適用)の税額控除率はそれぞれ以下の通りとなります。
① 一般型
増減試験研究費割合 | 税額控除率 | 控除率の上限・下限*1 |
9.4%超の場合 | 10.145%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35 | 上限10%
(14%*2) |
9.4%以下の場合 | 10.145%-(9.4%-増減試験研究費割合)×0.175 | 下限2% |
設立事業年度又は比較試験研究費がゼロの場合 | 8.5% | - |
*1 法人税額の25%相当額が限度とされる。また、コロナ前(2020年2月1日より前に終了する事業年度)と比較し、売上が2%以上減少しているにも関わらず、試験研究費が増加した場合には、 法人税額の30%相当額が限度とされる。
*2平均売上金額(その事業年度および過去3年の事業年度における売上金額の平均額)に占める試験研究費の割合が10%超の場合には、控除上限が上乗せされ14%が上限となる。
(用語の意義)
増減試験研究費割合とは:増減試験研究費の額(試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額) の当該比較試験研究費に対する割合
比較試験研究費とは:前3年以内に開始した各事業年度の試験研究費の額を平均した額
② 中小企業技術基盤強化税制
増減試験研究費割合 | 税額控除率 | 控除率の上限・下限*1 |
9.4%超の場合 | 12%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35 | 上限17% *2 |
9.4%以下の場合 | 12% | - |
*1 法人税額の25%相当額が限度とされる。また、コロナ前(2020年2月1日より前に終了する事業年度)と比較し、売上が2%以上減少しているにも関わらず、試験研究費が増加した場合には、 法人税額の30%相当額が限度とされる。
*2平均売上金額(その事業年度および過去3年の事業年度における売上金額の平均額)に占める試験研究費の割合が10%超の場合には、控除上限が最大10%上乗せされる。
③ オープンイノベーション型
種類 | 相手先 | 控除率*1 |
共同試験研究・委託試験研究 | 特別研究機関等 | 30% |
大学等 | ||
新事業開拓事業者等 | 25% | |
成果活用促進事業者 | ||
中小企業者 | 20% | |
他の者(民間企業等) | ||
技術研究組合 | ||
知的財産権の使用料 | 中小企業者 | 20% |
*1 法人税額の10%相当額が上限
*2 制度適用に当たっては契約書等の記載要件や第三者による確認等が必要となりますので留意が必要です。
3.クラウドを通じて提供されるソフトウェアに係る試験研究費の範囲
かつてはソフトウェアに関する研究開発を行った場合、マスター版を作成しそれらをCD-ROM等に複写して販売するといった形態が一般的とされていましたが、現在では、クラウドを通じてサービス提供を行うことが一般的となっています。
これまでも市場で販売するために製作するソフトウェアに関する研究開発費については、試験研究費の税額控除の対象となっておりましたが、顧客へサービスを提供するため自社で利用するソフトウェアの開発費については、会計上では費用処理されるものの、税務上では資産として扱われるため、損金算入が要件とされていた改正前の条文では試験研究費の税額控除の対象となっていませんでした。
しかしながら、クラウドを通じてサービス提供を行う場合についても、市場販売を目的とするソフトウェアの開発と実態は変わらないため、今回の改正により、税務上で資産計上された研究開発用資産についても、会計上で費用処理されたものは試験研究費の税額控除の対象とされることになりました。
4.おわりに
試験研究費の会計処理や税務処理については、かなり煩雑・複雑であり、税務上のインパクトも大きいことが想定されることから、適用にあたっては税理士等に必ず確認いただくことをおすすめいたします。
弊事務所でも試験研究費の税額控除に関するご相談やセカンドオピニオン等行っておりますので、ご相談などございましたら下記お問い合わせフォームからご連絡ください。
竹田
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