投資の形態については様々な方法がありますが、今回は似ているようで違う任意組合と匿名組合の違いについてご説明したいと思います。
これらの違いについては、少し論点が多いことから、基礎編と応用編の2つに分けてご説明したいと思います。
Index
1.任意組合について
(1) 任意組合とは
任意組合とは、任意組合の組合員が任意組合契約に基づいて出資を行い、共同で事業を営むことを約するものです(民法667条)。
任意組合に法的な主体性はなく、法人格はありません。
(2) 資産・負債の帰属
任意組合については、各組合員からの出資を原資として資産等を購入し、事業を営むことになりますが、それらの資産については、各組合員の共有に属することになります。
同様に、事業によって生じた債務についても、組合員全員に帰属することから、組合員全員が無限連帯責任を負うことになります。
(3) 任意組合の業務執行
任意組合の業務は、各組合員が業務執行権を有しており、組合員の過半数を持って決定されます。
しかし、組合契約の定めるところにより、1人又は数人の組合員又は第3者に委任することも可能です。
(4) 損益分配
組合が事業を営むことにより発生した利益及び損失は、組合契約に定める分配割合に基づいて、各組合員に帰属することになります。損益分配について特段定めがない場合には、各組合員の出資額に応じて分配されます。
2.匿名組合について
(1) 匿名組合とは
匿名組合とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる契約です(商法535条)。
つまり、匿名組合の出資を行う者(匿名組合員)は営業者と呼ばれる匿名組合に関する事業を行う者に出資を行い、営業者は匿名組合の事業によって得た利益を匿名組合の出資者に分配するという契約です。
(2) 財産の帰属
匿名組合員の出資は営業者の財産に属することになります(商法536条)。
従って、任意組合のように各組合員の共有財産となるものではなく、営業者が組合財産に関する権利を持つことになります。
(3) 財産状況に関する検査
匿名組合員は、営業年度の終了時において、貸借対照表の閲覧又は謄写の請求が認められており、営業者の業務や財産の状況を検査することができます。
また、重要な事由がある場合には、営業年度の終了時ではなくとも、裁判所の許可を得て、営業者の業務及び財産状況の検査をすることができます。
3.税務上の取り扱いについて
(1) 任意組合
① 任意組合の取り扱い
法人税の納税義務者については、法人税法第4条に定められており、
内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合又は第八十四条第一項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る。
と規定されています。
上記にある、人格のない社団等とは、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう(法2①八)と規定されており、任意組合が人格のない社団等に該当するのではないかという懸念がありますが、これについては、法人税法基本通達1-1-1において、任意組合は人格のない社団等に該当しないことが明記されています。
従って、任意組合については、法律上法人格がないため内国法人に該当せず、人格のない社団等にも該当しないことから、納税義務者に該当せず、任意組合自体に法人税が課されることはありません。
② 投資家の取り扱い
上記①に記載した通り、任意組合自体に法人税は課されることはありませんが、任意組合が事業を営むことにより発生した、利益及び損失については、組合員に帰属することになる(いわゆるパススルー課税)ため、各組合員において課税されることになります。
詳しい取り扱いについては応用編にてご説明いたします。
(2) 匿名組合
① 匿名組合の取り扱い
匿名組合については、上記(1)の任意組合と同様、法人格を有しておらず、法人税法基本通達1-1-1において、人格のない社団等に該当しない旨が記載されているため、法人税法上の納税義務者に該当せず、匿名組合自体に法人税が課されることはありません。
② 営業者及び投資家
匿名組合の事業によって発生した損益は、匿名組合の営業者及び匿名組合員の損益として課税されることとなります。
こちらについても、詳しい取り扱いについては応用編にてご説明いたします。
4.おわりに
今回は任意組合及び匿名組合の法律・税務の概要や取り扱いについて説明しました。
次回応用編では、より細かい税務の取り扱いについてご説明いたしますので、そちらもあわせてご覧ください。
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