こんにちは、税理士の竹田です。
今回は中小企業向けに消費税の簡易課税制度について、その計算方法や選択することによるメリット・デメリットについて解説します。
また、コロナウイルスによる影響やインボイス制度への影響についても触れていますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
Index
1.簡易課税制度とは
簡易課税制度とは、消費税の計算について、中小企業の納税事務負担を軽減するために設けられた制度です。
簡易課税制度の適用を受けるためには、その課税期間の基準期間(個人の場合はその年の前々年、法人の場合はその事業年度の前々事業年度をいいます。)における課税売上高が5,000万円以下で、下記2に記載している届出書を提出する必要があります。
2.適用を受けるための手続き
簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、納税地の所轄税務署長に「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
また、災害や新型コロナウイルス感染症等の影響などやむを得ない事情により被害が生じている場合で一定の要件に該当する場合には、やむを得ない事業がやんだ日から2か月以内に「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を提出することによりその課税期間から適用が可能となります。
新規開業した事業者も適用を受けることが可能で、その場合には、開業等した課税期間の末日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から適用を受けることができます。
3.適用をやめるための手続き
簡易課税制度の適用を受けると、原則として2年間は継続して適用を受ける必要があり(ただし、調整対象固定資産(1つの取引単位が100万円以上の資産)を取得した場合など一定の要件に該当する場合には、3年間継続適用されることになります。)、適用をやめるためには、「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出が必要です。
また、上記2と同様、災害や新型コロナウイルス感染症等の影響などやむを得ない事情により被害が生じている場合で一定の要件に該当する場合には、やむを得ない事業がやんだ日から2か月以内に「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を提出することにより、その課税期間から適用をやめることができます。
4.簡易課税制度による計算方法
原則的な消費税の計算方法は、売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した金額を納付することになりますが、簡易課税制度では売上に係る消費税額からその売上に係る消費税額に事業区分に応じたみなし仕入率を乗じて計算した金額を控除した金額が納付税額となります。
事業区分に応じたみなし仕入率は下記の通りです。
みなし仕入率 |
|
卸売業 | 90% |
小売業 | 80% |
製造業等 | 70% |
その他の事業 | 60% |
サービス業等 | 50% |
不動産業 | 40% |
5.簡易課税制度適用によりメリットがある事業者・デメリットを受ける事業者
① 簡易課税制度適用によりメリットがある事業者
では具体的にどのような事業者が簡易課税を適用するとメリットがあるかご説明します。
1つ目が不動産事業や処方薬を扱う薬局など比較的非課税売上が多い事業者です。このような事業者は、原則的な方法で消費税の計算した場合、課税売上割合が低くなってしまい、売上に係る消費税から控除する金額(仕入れに係る消費税額)が小さくなる傾向にあります。そのような場合は簡易課税制度を適用した方が納付税額が抑えられるため有利になる場合があります。
2つ目は、士業やコンサルタントなど経費の多くを人件費が占めるような事業者です。
これらの事業者についても人件費以外の経費が少ない場合には、みなし仕入率を用いて計算した方が原則的な方法により計算した仕入税額控除額よりも大きくなるため有利になる傾向にあります。
3つ目は、小規模の事業者との取引が多い事業者です。インボイス制度の導入により、今後は適格請求書発行事業者以外が発行する請求書等は仕入税額控除の適用を受けることができなくなっています。小規模な事業者についてはインボイス制度の要件を満たしていない請求書等を発行することが考えられますが、簡易課税制度は売上のみをもとに消費税額を計算するため、支払に係る請求書等がインボイス制度の要件を満たすか否かにかかわらず控除が可能となるためです。
② 簡易課税制度を選択するとデメリットがある事業者
次に、簡易課税制度を適用するとデメリットが発生する事業者についてご紹介します。
1つ目は、輸出売上などが多い業種です。計算式のロジックから考えていただけるとお分かりになるかと思いますが、簡易課税制度を適用すると消費税の還付は受けられません(中間納付が多い場合には中間還付はありえます。)。このように還付が見込まれる事業者については原則的な方法で計算した場合には受けられた還付が簡易課税制度を適用することにより受けられないというのデメリットがあります。
2つ目は、多額の設備投資を行った若しくは予定している事業者です。多額の設備投資を行った場合には、支払う消費税額が多くなるため、簡易課税を適用していると原則的な方法により計算した金額よりも納税額が増えてしまう可能性があります。
6.おわりに
それぞれの事業者の現状における実態や将来的なことも考慮した上で簡易課税制度を選択・継続していくのか若しくは適用をやめるのかを検討する必要があります。
お客様の状況を確認した上で、どちらを選択すればよいかアドバイスさせていただきますので、是非お気軽に下記お問い合わせフォームからご連絡ください。
竹田
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