中小法人と中小企業者の違いについて

法人税

こんにちは、税理士の竹田です。

日本の法人税法上、大法人よりも中小法人の方が優遇される規定が多いということは広く知られているかと思います。しかし、法人税法上のどのような法人が中小法人に該当するのかということについてご存じの方はあまり多くないのではないでしょうか。

また、中小法人と似た言葉で中小企業者という用語があります。

今回は、どういった法人が中小法人、中小企業者に該当するのか、また、それぞれに該当した場合に適用される規定についてご説明いたします。

 

1.中小法人とは

上記で何度か中小法人と記載しておりますが、実は、中小法人という言葉は税法上で規定されておらず、便宜的に使用されている言葉になります。

では、どういった法人を中小法人と呼んでいるかというと、事業年度終了時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下である法人のうち、次の①~⑥に掲げる法人以外の法人を中小法人といいます。

 

① 保険業法に規定する相互会社

② 大法人(資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人

③ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(②に掲げる法人を除く。)

④ 投資法人

⑤ 特定目的会社

⑥ 受託法人

 

特殊な法人形態を除けば、上記②や③により判定するケースが多いかと思います。上記は条文を引用しているのでもう少しわかりやすく説明すると、判定する法人の資本金の額が1億円以下であったとしても、その法人を直接・間接的に100%支配している法人の中に資本金が5億円以上の法人がある場合には、その法人は中小法人に該当しないということになります。

 

支配している法人については内国法人とは定められていないため、親会社が海外の場合であっても、その海外親会社の資本金が5億円以上であれば支配されている日本の法人は中小法人に該当しないことになります。

 

2.中小企業者とは

中小企業者については税法上で規定されており、租税特別措置法において定義されています。

では、どういった法人が中小企業者に該当するかというと、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人(下記①、②に掲げる法人を除きます。)又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人をいいます。

 

① 発行済み株式又は出資の2分の1以上が同一の大規模法人*の所有に属している法人

② 上記①のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人*の所有に属している法人

 

*大規模法人とは、次に掲げる法人をいいます。

イ 資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人

ロ 資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人

ハ 大法人(資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人

ニ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(ハに掲げる法人を除く。)

 

3.中小法人・中小企業者に該当した場合に関連する規定

中小法人、中小企業者に該当した場合、どのような規定が適用されるのかについて以下に記載しています。

なお、適用除外事業者(前3年以内の事業年度の所得金額の平均が15億円を超える法人をいいます。)に該当する場合、一定の租税特別措置法の規定が適用されないことになりますのでご留意ください。

 

① 中小法人

・法人税の軽減税率の適用

・交際費等の損金不算入

・特定同族会社の特別税率

・欠損金の繰越控除の制限

・欠損金の繰り戻し還付の適用

・貸倒引当金の損金算入制限

 

② 中小企業者

・試験研究費の税額控除

・中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除

・中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除

・給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除

・被災代替資産等の特別償却

・特定事業継続力強化設備等の特別償却

・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

 

4.おわりに

中小法人・中小企業者ともにその判定にあたってはかなり複雑になっています。

また、その判断を誤った場合には、修正申告事由にもなる可能性があることから注意が必要です。

これらに関する個別のご相談も承っておりますので、ご相談の際は下記お問い合わせフォームからご連絡ください。

 

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竹田

 

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