歴史的な円安の影響により海外輸出を行っている企業については、これまで以上に利益を上げている法人や、この円安を期に海外向け取引を検討されている方もいらっしゃるかと思います。今回は輸出取引が多い法人の消費税早期還付スキームについてご紹介したいと思います。
Index
1.消費税の還付を受けるために確認すべきこと
まず確認する必要があるのが、消費税の納税義務があるかどうかということです。
その事業年度の2年前の事業年度における課税売上高が1,000万円以下であったり、法人の設立後2年間は消費税の納税義務が免除されるということをご存じの方も多いかと思いますが、消費税の納税義務がないということは、消費税の還付申請もできないということになります。
従って、消費税の納税義務がない事業者については、消費税の納税義務者になるため必要があるのですが、届出書(消費税課税事業者選択届出書)を提出するにより課税事業者を選択することが可能ですので、届出書を提出するかどうか検討する必要があります。
2.輸出免税取引について
消費税が還付されるケースについては、そもそも売上が少なかったり、設備投資が多額な場合など、売上等にかかった消費税よりも仕入れ等により支払った消費税が多い場合が対象となりますが、経常的に還付ポジションになるのは、輸出売上により売上に係る消費税が免除される金額が多いというケースが最も多いかと思います。
そもそも輸出免税売上とはどういった取引かというと、消費税法第7条に規定されており、以下のような取引が該当します。
① 国内からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
② 外国貨物の譲渡又は貸付け
③ 国内と国外との間の旅客若しくは貨物の輸送又は通信・郵便
④ 輸送のために使用される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け
⑤ 非居住者に対する著作権等の無体財産権の譲渡若しくは貸付け
など
また、輸出免税の適用を受けるためには、その取引が輸出取引等である証明が必要になるため、輸出許可書や税関長からの証明書、発送伝票の控えなど書類の保存が必要な点も留意が必要です。
3.消費税の還付を早期に受けるためのスキーム
(1)課税期間の短縮
消費税の申告は、原則として、事業年度ごとに1回行うこととなりますが、消費税では課税期間という考え方があります。この課税期間については、税務署長に届け出ることにより1か月ごと若しくは3か月ごとに短縮することが可能です。この課税期間を短縮するための届出書を「消費税課税期間特例選択・変更届出書」といいます。
つまり、納税義務のある事業者が課税期間特例選択・変更届出書を提出し、課税期間を1か月若しくは3か月に短縮することにより、その1か月若しくは3か月の課税期間ごとに消費税の還付申告を行うことによって早期に還付金を受け取れるという仕組みになります。これは設立初年度の法人であっても適用することが可能です。
ちなみに、消費税の課税期間を1か月若しくは3か月に短縮したとしても、法人税や地方税の申告期限について影響はありません。
(2)関連書類の事前提出
消費税の還付申告を行った場合、税務署から消費税に関する関連資料の提出を求められることがよくあります。税務署から依頼された資料を準備・送付し、さらに税務署側でも確認が完了してから税額が還付されますので、ある程度手続きに時間を要するのが一般的です。
これらの時間を短縮するために、消費税集計表や取引金額の大きなインボイスなど関連資料を事前に提出しておくということも早期還付のためには有用です。
(3)電子申告
消費税の申告を行う場合、紙の申告書を郵送により申告するのではなく、電子申告にて申告書を提出するということも有効です。電子申告による還付手続きは書面による消費税の還付手続きよりも早いとされており、概ね3週間程度で還付処理がなされます。ただし、所轄税務署や追加での資料依頼を求められるなど状況により還付までの期間が異なります。
4.留意点
上記3のスキームを使用することにより、キャッシュフローが良くなるというメリットもあるのですが、いくつか留意点もあります。
課税事業者選択届出書や課税期間特例選択・変更届出書は一度提出すると2年間はその取り扱いをやめることができません。
また、課税期間を1か月から3か月若しくは3か月から1か月に変更することも可能ですが、こちらも同様に1度選択すると2年間は変更できないことになっています。
従って、これらの届出書を提出する場合には、少なくとも2年間くらいの数値の見積もりを行った上で、提出するかどうか決める必要があります。
5.おわりに
実際に上記スキームを実行するかどうかのご相談や、実行した後のお手続きにつきましてもサポートさせていただきますので、ご不明な点やご質問などございましたらお気軽にご相談ください。
こちらのクリックもよろしくお願いします。↓